「空からきた魚」
アーサー・ビナード エッセイ集
昆虫少年だったアーサーさん。来日して日本語を学ぶために、習字教室に通い短歌会や句会に参加し、落語を聴いたり謡を習ったり・・・すごい勉強家のアーサーさん。
エッセイに自作の短歌や俳句が添えられていたりして愉しい。日本人である奥さんとの国際結婚の顛末を綴った「欄外に生きる」(第一章)というエッセイの最後にある歌をご紹介しよう。
パスポートに配偶者ビザを押されたり
紛れもなく僕は君の夫よ
二人の日本の詩人がお好きだそうで、菅原克己さんの詩「『絵日記』という喫茶店」を最終章でのエッセイ「ローマの休日、調布の平日」で、日本語学校で飛び級したクラスの市川信子先生のもとで教わった小熊秀夫の詩「しゃべり捲くれ」をエッセイ「下町でしゃべりまくれ」で紹介している。間違ってもいい、周りを気にするなと小熊秀夫に励まされたと、アーサーさんは言う。
「私は君に抗議しようというのではない、
―ー私の詩が、おしゃべりだと
いうことに就いてだ。
私は、いま幸福なのだ
舌が廻るということが!
沈黙が卑屈の一種だということを
私は、よく知っているし、
沈黙が、 何の意見を
表明したことにもならないことも知っているから―ーー。
私はしゃべる。
若い詩人よ、君もしゃべり捲くれ。
(後略)・・・・・・・」
アーサーさんの子ども時代のエピソードや結婚した頃の話、落語や俳句や短歌の話、自然環境の話、お気に入りの移動手段・自転車の話、好きな詩の話など、興味深いエッセイが満載。
(t)